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疎植栽培と立毛乾燥で飼料用米の乾燥費用が大幅削減
 株式会社ヰセキ東北 山形支社 齋藤博行   
 はじめに
 山形県遊佐町における飼料用米栽培への本格的な取り組みは平成16年からですが、庄内みどり農協と㈱平田牧場との契約栽培で取り組んできました。庄内地域は、大型乾燥調整施設整備が進んでいたこともあり、飼料用米の乾燥もこれを利用することになります。

 飼料用米の「ふくびびき」は、成熟期が9月下旬で、当地域では中生の早い品種でもあり、その後に「ひとめぼれ」「はえぬき」「コシヒカリ」と順次収穫作業が行われるように品種構成と作付面積が決定してます。

乾燥調整施設の稼働計画を変更しないで飼料用米の乾燥を行うために、平成20年は飼料用米の乾燥は一般米の作業に支障がないように一般米の刈り取り前と刈り取り後に搬入日が指定されていました。

 また、籾のコンタミ防止のため、飼料用米の収穫が終わるとただちにコンバインと乾燥機の徹底清掃を行ってから、一般米の収穫になるので非常に多忙になります。

最後であれば「コシヒカリ」の残籾があったとしても飼料用米への影響はないし、収穫後のコンバインや乾燥機の清掃も急いで行う必要はないのです。

 高水分籾の搬入は、特に登熟が遅れている未熟籾の玄米は乾燥後も15%以上であるため腐敗防止のために、1.8mm以下の高水分屑米は廃棄処理したそうです。

写真1は平成20年秋の63株/坪(19株/㎡)の「ふくひびき」ですが、長期間大豆栽培した後の復田では、無肥料でも倒伏しています
 写真1:大豆後復田の慣行栽培で倒伏した「ふくひびき」
 立毛乾燥を行おうとしたきっかけ
 平成20年の飼料用米のカントリーエレベーターへの搬入日は9月20日で、その時のコンバイン収穫籾水分は31%の高水分でした。低コスト生産が求められなかで、石油価格が高騰した年でしたので、生産コストを引き上げる結果になりました。多くの石油を使用したことは、消費者とともに地球環境にやさしい米づくりを目指している遊佐町としても反省すべき事項でした。

飼料用米の低コスト生産技術として、苗箱が半分の疎植栽培(写真2)は育苗資材経費の半減と、田植え作業時間の短縮や作業補助者の人数削減や軽労化等のメリットがあります。

また、この年に「ふくひびき」の疎植栽培と慣行栽培の比較では、750kg/10aの多収となりましたが、疎植栽培の稲姿は無倒伏であり、慣行栽培ではやや倒伏が見られます。(写真3,4)

同年に山形県農業総合研究センターが、V溝直播栽培で強稈・大粒品種「べこあおば」の立毛乾燥を実施し、11月4日には水分16~17%まで低下することを明らかにしています。(第1図)

飼料用米品種の「べこあおば」は千粒重が33gの大粒品種で、しかも強稈品種ですので倒伏に強いので立毛乾燥に適している多収性品種です。(写真5、第1表)

収量が多いと籾乾燥には長時間を必要とし乾燥施設の利用効率が低下します。このため、立毛乾燥によって籾水分を低下させて乾燥調整施設に搬入することは低コスト生産と乾燥調整施設の効率稼動に結びつくのです。

  
 写真2疎植栽培は予備苗を乗せなくても    写真3:疎植栽培で収量748kg/10aの    写真4:慣行栽培(63株/坪)で収量750kg/10a
     田植えが行えます。              「ふくひびき」。さらに100kg/10a増収可能         の「ふくひびき」限界収量。
         
  第1図:立毛乾燥における出穂後積算気温と籾水分の関係             写真5:疎植栽培で1016kg/10aの「べこあおば」
     2010 山形県農業総合研究センター
 
 第1表 飼料用米の疎植栽培と収量性(遊佐町・転作大豆後、無肥料栽培)
区分 (/3.3)

粗玄米重Kg/10a

粗玄米千粒重

倒伏程度

平成20
ふくひびき

疎植区(37)

748

21.9

慣行区(63)

750

21.9

なびき

平成21
べこあおば

疎植区(37)

1016

31.1

慣行区(70)

1006

30.7

 
 実際にやってみたら収量・品質・コストはどうなった
 平成21年の「べこあおば」の成熟期(コンバイン刈取適期として)は10月1日でしたが、その後、立毛乾燥を行い、コンバイン収穫は10月15日に実施しました。当初予定では20日の予定でしたが、カントリーエレベーターの施設運営の都合で早まっています。

歩刈り調査を実施した日の籾水分は29%でその後の水分推移は第2表のとおりです。立毛乾燥10日目で6%ほど低下し、22.7%になりましたが、コンバイン収穫の前日に降雨があり24%まで戻っています。一部を20日まで残したところ20.8%まで低下しました。(第2図)

今回の立毛乾燥は、日数経過とともに低下の傾向ですが、籾単粒水分の変異は10月10日が±2.7%で最小になりますが、その後は拡大していきます。最大水分籾は35%を超えています。(第2表)

これは、疎植栽培は茎が太く根張りが良いので遅くまで登熟が進むことになりますので、未熟粒が次第に登熟してきたことを意味します。この未熟粒の水分が低下するには霜がおりて稲の生育が停止する11月になるでしょう。

当地区の生籾乾燥料金は1kgあたり18円ですので、1000kgの生籾で水分が30%と20%の違いでは、実質1800円ほど乾燥料金負担が減少するようです。

立毛乾燥は収益性が高まるだけでなく、燃料費もかからず乾燥時間も短くなりますので、施設利用効率も高まりますので、施設運営者から注目されています。

 図2:「べこあおば」の立毛乾燥の籾水分の推移(2009)
 平成22年の立毛乾燥の籾水分

前年の結果を踏まえ、遊佐町と隣接の酒田市では飼料用米の収穫乾燥は一番最後に行うことになりました。遊佐町の37株疎植栽培展示圃の飼料用米「夢あおば」は10月4日に収穫しましたが、収穫時の籾水分は15.115.2%と非常に低下しており、短時間の仕上げ乾燥で済んでいます。

これは、10月2日に「ダシ風」と呼ばれるフェーン現象の乾燥した東風が奥羽山脈を越えて、庄内平野に吹き込んだために立毛乾燥が一挙に進みました。以前には14%台まで乾燥したこともあります。

このときのアメダスの数値は、10月2日は東南東の平均風速3mの風が吹き、午後には気温が25℃まで上昇し、湿度は20%まで低下しました。翌日の3日は東南東の平均風速6.5mで乾燥には好適の条件でした。

同様に飼料用米「ふくひびき」を37株疎植栽培しました酒田市では、8日遅い10月12日に刈り取りしてカントリーエレベータに搬入しました。10月9日から3日間連続して降雨があったために、刈取時籾水分は19.8~20.2%で遊佐町のようにはなりませんでしたが、前年までは、一番最初に刈り取っていたので籾水分が30%前後で乾燥と経費で苦労したようですので、今年は立毛乾燥によってカントリーエレベーターでの乾燥作業がスムーズに行えたと喜んでいたようです。

 東北で立毛乾燥をする場合の課題

東北地方日本海側の積雪寒冷地では、10月下旬になると日照時間が短くなり秋冷で降雨やみぞれによって乾燥効率が悪くなりますし、コンバイン稼働時間・日数がかなり制限されます。このようなことから10月中旬収穫が立毛乾燥の限界ではないかと判断されます。

このようなことから飼料用米の晩生品種は立毛乾燥の安定性を考慮して成熟期が10月1日頃の品種が望ましいでしょう。また、直播栽培では出穂期の遅れから、成熟期が大幅に遅れることがありますので、早生~中生で強稈性品種の栽培が安全でしょう。

大豆転作期間が長く、地力の高い圃場では「ふくひびき」の最高分けつ数は一株が60本もの大株になり、37株疎植栽培でもやや倒伏しました。このようなことから、倒伏防止のための肥培管理や生育診断技術の確立が求められます。
 飼料用米、疎植だからこそ立毛乾燥が良い理由

疎植栽培は、最高分けつ期頃に株が開帳し、株中心まで太陽光がそそぐことから、茎が固く太くなり稈基重が重くなるために挫折抵抗力が高まります。また、疎植栽培は下葉枯が少なく、葉鞘による支持力が維持されています。

一般米の刈り取り適期は、籾水分、収量、品質、食味を考慮した期間ですが、飼料用米では刈り遅れによって着色粒、胴割粒が発生したとしても、粉砕給与なので特に問題にならない訳ですし、屑米も全量出荷できますから、屑米の完全登熟と乾燥が進んだ段階で収穫することが望ましいのです。

飼料用米を立毛乾燥してから、カントリーエレベーターへ搬入して仕上げ乾燥行う最終品種として扱うことによって、コンバインや乾燥調整施設の清掃を積雪期間にゆっくりと行えますから施設運営には好都合なのです。

従来の田植機移植栽培と同様の技術での低コスト疎植栽培ですから、強稈性品種を使用すれば安心して立毛乾燥に取り組むことができます。

       
    疎植栽培「ふくひびき」のコンバイン収穫(2008)              飼料用米を搬入するカントリーエレベータ
       
    酒田市の「ふくひびき」収穫(2010.10.12)                    酒田市の「ふくひびき」収穫(2010.9.15)
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